おとぎ話は残酷かもしれない。
いばら姫はいばらに覆われた城の奥底で呪いによって眠り続けるお姫様を強くて美しい王子様が助け出し、口づけによって眠りの呪いを解くお話。
ある日のこといばらの城に挑む勇敢な者が現れた。
険しいいばらを鋭い爪でなぎ倒す姿は強くはあったが美しいとは言い難く、彼には口づけができるような唇はなく、代わりに鋭い牙がそこにあった。
ほどなくして彼は城の奥、少女のところにたどり着くがいばらのトゲよりも鋭い爪では彼女を抱きかかえることはおろか触れることさえできなかった。もしこんな手で触れようものなら少女をズタズタに引き裂いてしまうだろう。
その時彼は自分が王子でないことに気が付いた。
彼ができることは二つ。いばらの代わりになること。
本物の王子が来るまでの間ただひたすら、いばらのトゲのごとく少女を守り続ける。
もう一つは、王子に殺されること。
いばらの排除と口づけが少女の呪いを解く唯一の手段だからだ。
彼は待ち続ける。城を覆っていたいばらさえ枯れるほどの長い時間。
彼女の呪いを解くために、王子に殺されるその日まで…