昔々、ヴォルフェルニア王国での話である。
幼馴染の王女への強い想いから騎士になったアルカレスという男がいた。男は狂おしいほど王女に憧れており彼にとって王女とは世界の全てだった。
王女はとても臆病で戦争が嫌いだった。アルカレスにとって王女を悲しませるものは全て敵だった。
【彼女を悲しませるモノなどこの世のあってはならない!!】
アルカレスは戦争を終わらせるために王国に敵対するものを片っ端から叩き斬った。自らが傷ついても前進し王女のために壊して壊して破壊しつくした。
そしてアルカレスの活躍で王国に平和が訪れる。きっと王女も喜んでくれる…
しかし彼の考えとは裏腹に謁見の間の王女は悲しい顔をしていた。その顔は怖がっているようにも見えた。アルカレスには理解できなかった。自分は王女を守り切ったはずだ。
ふと鏡に目をやるアルカレス、そこには長い戦いで殺気に満ちた瞳。深い傷で表情さえ作れない顔があった。もう元には戻らないだろう。
王女「優しかったあなたの、そんな顔は見たくなかった…。」
戦争で変わり果てた自分の顔が今王女を悲しませている。
【王女を悲しませるモノなどこの世にあってはならない…】
その後アルカレスは決して外れることのない仮面をつけ王国を去った。
そして数百年後、戦場に向かう仮面の騎士が一人、未練の塊の亡霊騎士が再び戦場の大地を踏んだ。名誉ある最後を求めて。