ふぅん...えらく豪快にやったもんだね、綿篠。
お前らしくないな。もちろん良い意味でな。
手足ごとなくせばいいだろっていう発想は悪くないぞ。
お前にでかい肉を切らせて料理をやらせたのが功を奏したということか。
覚えてるか
あの時自分と同類の動物の肉を食べてまで生きるのは嫌だ、と
お前、受け入れるのにだいぶかかったもんな。
はじめて料理させたときは一日中泣いていたよな。
「こんなのできない こんなのできない」って。
わかった時はショックだっただろ。
何故人間は動物よりも長く生きる事ができるのか。
それは、人間が一番他の生物を犠牲にするからだ。
その犠牲で人間は生かされている。
お前、他の仲間のウサギが死んでいく夢を何度も見て
神父めざすことにしたんだったな。
うん、本当にお前らしいよ。
本音を言うと助手をやってほしかったが、お前の気持ちを尊重すべきだと思ったんだ。
私はお前の保護者だからさ。
今、お前の姿見てがっかりしたとか思ってるか?
...残念、その逆だ。
私はその殺意と狂気に満ちたお前のその姿がいとおしくてしょうがないんだ。
手足がないから私の唇ばっかり親指でなでてるんだろ。
手足がないから私をこんな姿にしたんだろ。
手足がないからニヤニヤ笑ってるんだろ。
手足がないから次どうしようかわくわくしてるんだろ。
お前の考えてる事なんて隠してもだいたい察しがつく。
でも「そんな目で」私を見てるのかと思うと、なんかな...。
ふふ...気にするなよ。どうせすぐ元に戻るんだからさ。
生き返ってまたお前に殺されるの、楽しみにしてるから。
ねぇ、酔糸先生...少しの間黙っててくれませんか。
鋏で舌を切らせて下さい。
お願いします。
そうか、じゃあ最期にひとこと言わせてもらえないか。
...ありがとう、すきだよ。
(第一部 おわり)